たとえば仕事中にイラッとすることがあったとき、 「感情的になったりしない」という約束を思い出す。 多すぎる仕事を手を抜いて片付けようかと思ったとき、 「仕事はきちんとする」という約束を思い出す。 カーさんと約束したから。 それは、自分のためだから。 そう思わせてくれる、カーさんがいる。 カーさんとはじめて会った日のことは たぶん一生忘れないと思う。 会うまでの緊張感と、 その優しい人柄と、 真剣に叱ってくれたこと。 そして、はじめてのリアル。 それからも、メールでお話したり、 悪いことをしてしまうとお仕置きされたり。 そのたびに、カーさんに感謝している。 カーさん。 それは、親でも、恋人でも、友達でもなく、 不思議と、素直な自分でいられる相手。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 私には夢がある。 どうしても叶えたくて頑張っている。 カーさんにも、夢の話をしていて 「応援してる」の言葉に、励まされている。 好きなことだから、頑張る。 好きだという気持ちは、何よりも自分が頑張る理由になっている。 それでもやっぱり、辛いときもある。 うまくいかなくて、投げやりな気持ちになることもある。 その日も、うまくいかなくて辛い気持ちだった。 この気持ちを、聞いてほしかった。 カーさんなら、きっと受け止めてくれる。 聞いてくれる。 そう思ったから、メールした。 「もうやめたいって思った」 何日かたって、後悔した。 一時的な感情で「やめたい」なんて言ったこと。 カーさんの気持ちも考えずに、感情のままにメールしたこと。 会ったときに、きちんと謝ろうと思った。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その日も、いつものようにカーさんと待ち合わせる。 世間話をしながらホテルに向かう。 しばらく、お互いの話をする。 こうやって、話している時間は楽しい。 カーさんがいつものように優しいから、 自分がとった行動が、余計に情けなくなった。 「謝りたいことがあるんだけど」 そう言って、話を切り出した。 感情的になって自分の夢を否定したこと。 応援してくれているカーさんに「やめたい」なんて言ったこと。 本当にごめんなさい。 「…じゃあ、今日はその発言についてお仕置きしようか」 「はい」 カーさんのお説教が、心に響いていく。 自分が情けなくて、申し訳なくて、涙が止まらない。 カーさんに腕を引っ張られて、膝の上へ。 バシッ バシッ バシッ お尻に痛みが走る。 情けなさと、申し訳なさでいっぱいで どんどん涙が溢れてくる。 自分の感情が、自分でもわからなくなって、 キーとして、お仕置きにドキドキする余裕もなく、 ただ、涙が止まらない。 やがてスカートを捲くられて叩かれて、 下着も下ろされて叩かれて、 痛くて痛くて、どうしようもない。 カーさんの手が止まって、膝からおろされる。 痛いのと、怖いのと、情けないのと、 もう何が何だかわからない。 カーさんに腕を引っ張られて、ベッドからおろされる。 テーブルのそばにつれていかれて、 テーブルに手をつくように言われる。 この姿勢って、カーさんに触れていることができないんだ。 そう思うと怖くなる。 カーさんが荷物の中から道具を取り出す。 道具、嫌だよ。 怖い。 ビシッ お尻に強い痛みが走る。 痛い。 痛さと怖さで、反射的にその場に座り込む。 すぐに、カーさんに姿勢を戻される。 ビシッ ビシッ ビシッ… 嫌だ、もう我慢できない。 再び抵抗して座り込む。 もう嫌だ。 こんなに痛いの嫌だ。 あいかわらず止まらない涙と ものすごいお尻の痛み。 すぐそばにカーさんが立っている。 顔、見れないけれど きっと、すごく怒っている。 とりあえずお仕置きは我慢して受けよう。 そう思っても、怖くて立ち上がれない。 違う、お仕置きはとりあえず我慢するものじゃない。 自分が悪かったから受けるものだ。 しっかりお仕置きを受けて、 自分のしたことを反省するんだ。 立たなくちゃ。 私が悪かったんだから。 なんであんなこと言っちゃったんだろう。 ちゃんとお仕置きを受けなくちゃ。 でも、怖くて怖くてたまらない。 道具、怖いよ。 嫌だよ。 いろんなことが、ぐるぐるぐるぐる頭の中をめぐって、 自分でも何が何だかわからなくなる。 でも、立たなくちゃ。 すごい時間が経っている。 きっと、カーさんを待たせている。 「ごめんなさい」 カーさんを待たせてしまったことに。 顔をあげると、カーさんはすごく怒った顔をしている。 「どうしたの?」 「ごめんなさい」 「ちゃんとお仕置き受けられない理由、言ってみて」 「…怖くなってしまって」 「なんでそうされてるか、わかってる?」 「…」 「…」 「…」 「…」 どれくらい時間がたったのかはわからない。 カーさんが、小さな声で言う。 「いいよ・・・」 「え?」 「とりあえず、痛みは抑えるようにするよ」 これって、お仕置きの形だけ残すってことだね。 私が我慢できなかったから、 とりあえずお仕置きをして、 最終的な落としどころにもっていくってことだね。 パシッ パシッ パシッ… 今までのどんなお仕置きよりも痛くない 形だけのお仕置き。 私、何をやっているんだろう。 悪いことをして、 お仕置きもきちんと受けられなくて、 カーさんに気を遣わせて。 もう少し厳しくても大丈夫、そう思った。 でもそれは、カーさんに言うべきなんだろうか。 厳しいお仕置きを我慢できなかったのは私。 カーさんに、気を遣わせているのも私。 カーさんが、気を遣ってくれているのだから、 それは受け入れるべきなんだろうか。 パシッ パシッ パシッ ほとんど痛みを感じないこのお仕置きに いつの間にか涙は止まって 頭の中が少し、冷静になる。 今回の反省内容。 お仕置きを我慢できなくて、抵抗して カーさんに気を遣わせている。 こんなに、心が痛いお仕置きははじめてかもしれない。 「カーさん、私、もっと厳しくても大丈夫です」 「…」 ビシッ ビシッ ビシッ…。 さっきよりも少しだけ強くなったお仕置き。 たぶん、カーさんは呆れている。 私の自分勝手さに。 やがて、カーさんの力が強まっていく。 お説教とお尻を叩く音が部屋に響き続ける・・・。 どのくらい叩かれたかはわからないけど、 たぶんそんなに多くないと思う。 それでも、お尻の痛さと 自分への悔しさで、 一度は止まった涙が溢れてくる。 「座って」 お仕置きが終わってカーさんと向かいあう。 そしてカーさんからの少し厳しいお説教。 私、許してもらえないんだ。 そう思ったら、悲しくなる。 でも、そうだよね。 私が悪いんだから。 すると、 「…ちゃんと頑張って、またいい報告聞かせてよ」 急に優しくなったカーさんの口調に 驚いて顔をあげる。 そこには、とっても穏やかなカーさんの顔。 「やめたいなんて、もう言わないで」 「…」 「応援してる人だっているんだから」 「ごめんなさい…」 カーさんの優しい言葉に、また涙が溢れる。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 簡単に「やめたい」なんて言って。 お仕置きもきちんと受けられなくて。 ごめんなさい。 帰り道、カーさんは言った。 「相手の気持ちを、もう少し考えられるような子になってほしいかな」 「…」 「…ごめんなさい」 この日のお仕置きを、私は忘れることはないと思う。 悔しさと、申し訳なさと、情けなさと、後味の悪さが残って、 今までのどのお仕置きよりも心が痛くて、 心の底から、反省した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ それから… その日のことを、何度思い出しただろう。 何度、カーさんに「ごめんなさい」のメールを送ろうとしただろう。 いや、実際何度かは送ったかもしれないけど、 思い出すのは 「ごめんなさいって言葉ではなく、行動で示してほしい」 「ちゃんと行動することが大切だよ」っていうカーさんの言葉。 頑張ろう。 逃げないで、あきらめないで頑張ろう。 そう思った。 そう思って、頑張った。 実際、頑張るのは大変だった。 すごく忙しくて、体力的にも、精神的にもキツかった。 そんなときに思い出したのは、 やっぱりカーさんの言葉だった。 「またいい報告聞かせて」 「応援してるから」 何度も何度も、思い出した。 頑張ってみると、頑張れてしまう自分がいた。 応援してくれる人もいて、 認めてくれる人もいて、 ちゃんと結果がついてきた。 カーさん、結果出せたよ。 ちゃんと、頑張ったよ。 そんなある日、私は勘違いからある失敗をしてしまった。 自分が頑張っていることでの失敗。 ちょっと、無理をしすぎたかな? 考えてみれば、頑張ってはいたものの、忙しくて 少し気持ちに余裕がなくなっていた。 これじゃあいけないよね。 私は、久しぶりにカーさんにお仕置きをお願いした。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 都内、某所。 何度か待ち合わせをしたことがあるその場所へ向かう。 久しぶりに会える嬉しさと、緊張とで ものすごくドキドキした。 カーさんと待ち合わせて、ホテルに向かう。 会えて、すごく嬉しいのに、 なんだかとってもドキドキして、うまく話せない。 「私、緊張してるかも…」 「えっ?緊張してるの?会うの何度目だっけ? もうけっこう会ってるよね?」 「…ハイ」 「そろそろ慣れてよ〜」 そう言って、苦笑するカーさん。 キーとしては、毎回緊張するし、恥ずかしいんです。 ホテルに入って、ベッドに横になって、カーさんと話をする。 カーさんとの時間は、いつもとっても早く過ぎていく。 言わなきゃ。 言わなきゃいけないことがある。 「カーさん」 「ん?」 「前回、ありがとうございました」 「ん?」 「正直、カーさんの言葉はすごく厳しかったし、 それを受け入れるのには時間がかかったけど、 ちゃんと頑張ろうって思えて、頑張れたから… だから、そう思わせてくれて、ありがとうございました」 「…うん」 言えた。 ちゃんと言えた。 前回の「ありがとう」を。 そして、カーさんに頑張って行動した「結果」を聞いてもらった。 「すごいね」 「よかったね」 カーさんに聞いてもらえるのが嬉しかった。 嬉しくて、カーさんに甘えたくなって、もう少し近づいた。 カーさんは、頭を撫でながら言ってくれた。 「頑張ってるね」 カーさん。 そのひとことに、泣きそうになった。 私、その言葉が欲しかったんだ。 そう言ってもらいたくて、頑張ったんだよ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ …カーとキーとして会っている以上、 その先には「スパ」があるわけで、 そんな甘い時間は長くは続かない。 というわけで、反省内容の話になる。 「ものすごく充実していたんだけど、ものすごく忙しくて 少し、気持ちに余裕がなくなってしまって、 失敗をしてしまいました…。 それじゃあいけないって、思いました」 「そうだよね」 諭すような、穏やかな口調でのお説教がはじまる。 自分がしたことは悪いことだと、 十分にわかっているつもりでも、 カーさんに言われると、改めて気づかされる。 この人のお説教はすごい。 言葉が、心に響いていく。 「でも、今回は悪気があったわけじゃないから、 そんなに厳しくはしないから」 そう言われて、そのときが近いことを感じる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ じゃらじゃらじゃらじゃら…。 カーさんが持ってきたたくさんの道具。 なんでこんなにいっぱいあるの? 道具、怖いよ…。 カーさんは言う。 「今日はソフトだから、安心して」 カーさんの膝の上に乗せられて、お仕置きが始まる。 パシッ パシッ…。 痛くはないんだけど、ものすごく大きな音がして このあとできっと痛くされるんだって思って、ドキドキする。 どのくらい叩かれたかわからないんだけど、 お尻の痛みはほとんどない。 カーさん、きっとすごく気を遣ってくれている。 カーさんは、大丈夫かな? 手は痛くないんだろうか? 道具は嫌い。 やっぱり、カーさんの平手で叩かれたい。 その方が、カーさんの気持ちを感じられる気がして、安心できる。 道具は、嫌い。 でも…。 「カーさん、大丈夫ですか?」 「ん、何が?」 「手は痛くないですか?」 「手は痛いよ…」 やっぱり…。 「カーさん、私、大丈夫です」 「大丈夫ですから…」 カーさんの手に、ケインが握られる。 ヒュン、ヒュンって素振りをする音がする。 怖い、けど大丈夫。 頑張るんだ。 今日はちゃんと、頑張るんだ。 ピシッ ピシッ ピシッ…。 それが道具であると思えないほど、痛みを感じない。 カーさん、すごく気を遣ってくれているんだね。 回数の割に、ほとんど痛くないお仕置きが続いて カーさんは言った。 「これでお仕置きは終わりにするけど、 最後に、痛いの10回だけいくよ」 「ハイ…」 そうだよね。 カーさんは、ハードなスパが好きなんだよね?←本気でそう思ってたんです。 前回私がちゃんとガマンできなかったから、 気を遣わせてしまって、ごめんなさい。 ビシッ… たぶんこの1発で、お尻にくっきり痕がついたような 強い痛みが走る。 それでも、カーさんは気を遣ってくれているんだろうけど。 痛いけど、ガマンしよう。 そう思った。 ビシッ… ビシッ… ビシッ… とにかく姿勢を崩さないように 「痛い」とか言わないように 枕にしがみついていた。 お仕置きが終わって、ごろん、とカーさんが横になって 私の頭を撫でてくれた。 カーさん…。 私の中に、不思議な気持ちが湧き出てきた、 「私、どうしたらいいですか?」 「ん?どうしたらって、何が?」 「どうしたら、カーさんに楽しんでもらえますか?」 カーさんは、ハードなスパが好きなのに、←しつこいけど、本当にそう思ってたんです こんなに優しいお仕置きじゃ、楽しめないよね? 「ん?楽しんでって、何が?」 「私、ちゃんと頑張りますから」 「…気にしなくていいよ」 「でも…」 「無理しなくていいんだよ」 「だって…」 「自分は、ハードなイメージがあるけど、ソフトでも大丈夫だから。 自分の言いたいことが伝わってれば、それでいいんだよ」 ↑この言葉に、かなり驚いたんです… …カーさん。 カーさんの優しさがすごく嬉しくて でも、だからこそ、カーさんに楽しんでほしいと思った。 それに、私自身、もう少し頑張りたかった。 「もう少し頑張る…」 「じゃあ、もうちょっとだけ厳しくしようか」 「ハイ」 「あんまり厳しくしすぎるのも、ね」 「ハイ」 「ちゃんと反省して欲しいから、もう少しだけ厳しくするね」 「…ハイ」 「耐えられなかったら言って」 それからの痛みは、ハンパなかった。 振り下ろされるケインの、一打、一打が ものすごく痛くて、 ひたすら枕にしがみついていた。 ビシッ… ビシッ… 切られるような痛み。 でも、カーさんは本気じゃない。 手加減している。 それはわかった。 わかったけど、痛かった。 どれくらい叩かれたかはわからないけど、 たぶんそんなに叩かれていないんだろうけど、 痛さが辛くなってきて、 叩かれるたびに、自分が悲鳴をあげていた。 頭がぼうっとして、よくわからなくなってきたとき、 ふと、前回のカーさんの言葉を思い出した。 「ごめんなさいって言葉ではなく、行動で示してほしい」 「ちゃんと行動することが大切だよ」 ビシッ…。 「痛い」 ガマンしなくちゃと思っていても、 あまりの痛さに、本能的に姿勢を崩してしまう。 ダメだよ…。 ガマンしなきゃダメだよ…・ ここで頑張れなきゃ、前回と同じになる。 そう思って、もとの姿勢に戻る。 ビシッ… ビシッ… ビシッ… 「痛い…」 痛いよ…。 頑張らなきゃ、ここから頑張らなきゃ…。 頭の中に、いろんなことがぐるぐる回りだす。 ああもう、考える前に姿勢だけ戻そう。 ビシッ… ビシッ… 再びケインが振り下ろされる。 「またいい報告聞かせて」 「応援してるから」 今、私のお尻を叩いてるカーさんじゃなくて、 前回のカーさんの声が聞こえた気がした。 大丈夫。 頑張れる。 もうダメって思っても、 そこからもう1回、あと1回って思えば頑張れる。 そういう気持ちでいれば、 10回とか、20回とか頑張れるかもしれない。 いつの間にか泣いていた。 痛いからなのか、怖いからなのか、 それともほかの理由からなのかはわからないけど。 「もう少し頑張れる?」 カーさんの穏やかな声。 ここで、「もう無理」って言えば、カーさんは止めてくれる。 でも… 「約束したから…」 辛いことがあっても、逃げないで頑張るって 前回、そう約束したから。 …最後はもう、一打ごとに姿勢を崩していたと思うけど、 痛すぎて何も考えられなくて、記憶がない。 「もうお仕置きは終わり」 そう言われて、体中の力が抜けた。 「今日は頑張れたね」 そう言ってもらえて、やっと、許された気がした。 お別れの時間の前の、ほんの少しの時間。 カーさんにくっついて、甘えてみる。 この時間が好き。 心が、満たされていく…。 パワーが、私の中にチャージされていく…。 大丈夫。 また、頑張れる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ カーさんと出会う前、こんな自分は想像できなかった。 カーさん。 それは、親でも、恋人でも、友達でもなく、 素直な自分でいられる相手。 こんなにも、「頑張ろう」と思わせてくれる相手。 ありがとう、カーさん。 カーさんのおかげで、頑張れる私がいる。 ありがとう、カーさん。 ありがとう …Y'zさん。 |